会計監査は時間との勝負です。
それは期末監査でも四半期レビューでも、また実査や立会においても同様です。
特に雑多な検討科目が多かったり、作業量が多い若手スタッフの場合は、タイムマネジメントをしっかりしておかないと監査期間の後半で苦しむことでしょう。
私は大手監査法人でおよそ5年、そして今も非常勤として監査をしております。
それら実体験から、監査の現場入りをする前に確認しておいた方がいいと思うことについてご紹介します。
現場に入る前に確認しておくべきこと
割当・監査日程の確認
まず一番最初に確認しておくべきこととして、自分の割当科目や全体の監査日程があります。
自分が何の科目を検討するのかによって、事前に確認しておくべき内容や現場入り後の動き方が変わってきます。
例えば、財務系の科目(預金や借入金など)であれば、銀行確認状の回収状況を常に把握しておくべきですし、営業科目であれば債権債務の確認状や事前の分析作業が大事になってきます。
科目によって、効率的に監査を進めるための段取りが変わってくるので、自分が何の科目が割り当てられているのかということについては、事前に確認しておきましょう。
科目の割当の確認と同じぐらい大事なのが、全体の監査日程の確認です。
四半期レビューにしても期末監査にしても、監査法人の意見審査、監査役への報告会、数値を修正する実質的な期限など、監査業務を進めるうえで守らなければならない期限があります。
実際には主任や社員の調書レビューの時間も必要なので、科目担当者は上記期限からさらに早く検討を終了する必要があります。
これらにオンスケで対応していくには、
- 会社にはいつ資料を依頼して、いつまでに入手する必要があるか
- いつまでに分析や質問を行う必要があるか
- いつまでに検討を終わらないといけないか
などの、細かい作業スケジュールを自分で組み立てる必要があります。
もちろん、実際の数字は資料をもらってからじゃないと分からないので、細かい作業時間はブレてくるでしょうが、ある程度の作業スケジュールは立てておくべきでしょう。
前期調書の確認
自分の割当科目が分かったら、前期調書を必ず確認しておきましょう。
前期調書には前期の検討過程はもちろん、科目によっては科目の性質などの参考情報も纏められている場合もあります。
前期調書を確認しておくことで、検討方針や作業のイメージが湧いてくると思います。
現場に入って前期調書を確認している時間はないので、前期調書は現場に入る前に確認しておきましょう。
また、前期調書を確認して不明点があれば、前期担当した先輩を捕まえて、必ず解消するにしておきましょう。
想定されるリスクや論点の確認
毎期同様の論点があるのであれば、前期調書を見るだけである程度は想定されるリスク(アサーション)や論点を把握できるかと思います。
しかし、当期の業績や会社の動向によっては、前期とは違う論点が発生している可能性もあります。
例えば、事業所や店舗の撤退があった場合には、関連する損失や引当金、固定資産の減損などの論点が生じます。
想定されるリスクや論点は、会社のHPやプレスリリース、最新の議事録、チームMTGなどでキャッチアップできます。
新たなリスクや論点がありそうだなと思ったときは、まずは自分で検討ポイントなどを考えてみましょう。
そして、その内容を主任に共有した上で、「こんな感じで検討しようと思うんですがどうでしょうか?」というような感じで、事前に相談するようにしましょう。
もしかしたら主任が検討済みだったり、若しくは検討方針の変更を指示されるかもしれません。
監査は自分だけで行っているわけではありませんので、チームプレーを意識しながら進めるとGoodだと思います。
前倒しで出来ることがないか確認
前期調書の確認や事前に論点の把握などをした場合に、現場に入る前から対応できることもあったりします。
少なくとも、前期調書を当期用にファイルを整えたりすることは出来ます。
現場での監査に慣れているのであれば、そこまで前倒しでやる必要はありませんが、もし現場での作業を少しでも余裕をもって進めたい場合には、事前に調書のフォーマットを整えておくとよいでしょう。
上記以外でも、例えばすでに入手しているデータがあればそこは前倒しで作業できますし、事前に論点が分かっている場合には、当該論点の検討の骨組みを先に考えておくこともできます。
個人的には、現場では余裕をもって作業したい派なので、もし同じように考える方であれば、出来るだけ前倒しで作業できることがないか考えるのは有用と思います。
必要な文房具等の確認
最近は紙調書も減ってきているとは思いますが、調書作成や検討過程では文房具類が必要な場面もあります。
必要な文房具が手元にないばかりに、現場での作業時間が非効率になっては非常にもったいないので、そういったことはないように事前に確認しておきましょう。
例えば、専用の紙調書、確認状再発送用の切手・封筒類、修正テープ、色ペン、のり、認印、などなど。
科目によって必要な備品や文房具は変わってきますので、必要な文房具類がないかは事前に確認しておくとよいでしょう。
監査現場でも日々進捗を意識する
監査現場に入る前にしっかりと準備をしていれば、現場に入ってからは割とスムーズに作業を進められるかと思います。
しかし、監査も生ものなので、すべてが予定通りにいくということはありません。
そのため、監査日程の消化に応じて、日々どれだけ進んで、どれだけ未消化があるかは日々把握しておきましょう。
進捗がよければ他の方の手伝いに回り、進捗がよくなければ早めに主任や先輩に相談するようにしましょう。
まとめ
今回紹介した内容は、基本的な内容ばかりですが、こうした事前準備をしっかりとしていれば監査現場でも落ち着いて作業を進めることができると思います。