個人事業主で、廃業した後の経費の取扱いについて確認する機会がありましたので、備忘までに纏めておきます。
結論と条文の確認
結論としては、廃業後の経費であっても一定の条件を満たせば経費として計上することが可能です。
所得税法63条では、以下のように述べられています。(番号と赤字はポイントとなる箇所)
(事業を廃止した場合の必要経費の特例)
第六十三条 居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、①当該事業に係る費用又は損失で②当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その者のその廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得に係る総収入金額がなかつた場合には、当該総収入金額があつた最近の年分)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
満たすべき条件としては、①②の2つがあります。
それぞれ次の章で個別に解説します。
満たすべき条件の解説
①当該事業に係る費用又は損失か
事業廃止後に発生する「当該事業に係る費用又は損失」ということで、例えば下記のような経費等が対象になると考えられます。
- 当該事業を廃業するために発生した経費
- 当該事業で獲得した売上債権の貸倒損失
- 当該事業で販売していた商品在庫の値引き販売や廃棄に伴う損失
お店があれば原状回復費用などが発生するでしょうし、取引先に連絡・挨拶するために通信費がかかったりすることもあると思います。
そういった事業に係る費用や損失であれば、廃業後の経費としての対象となり得ます。
②事業を廃止しなかった場合に必要経費となったか
次に「当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の・・・必要経費に算入されるべき金額」であることも満たすべき条件となります。
ちょっと分かりづらい文章ですが、要するに事業を継続していれば、必要経費として計上できた費用であるならば、廃業後の経費でも必要経費として計上してよいということです。
ちなみに、必要経費として計上できるのは、次の金額とされています。
国税庁HP「No.2210 やさしい必要経費の知識」より抜粋。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
そして、いわゆる債務確定主義に合致している必要があります。
- その年の12月31日までに債務が成立していること。
- その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
- その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。
上記、必要経費の定義を満たしていることも満たすべき条件の一つとなります。
まとめ
廃業した年は、普段とは異なる費用も多く発生するものと思います。
必要経費に計上できるものは漏れなく計上して、しっかりと節税できると良いですね。