個人事業主やフリーランスの方で取引先と業務委託契約書を結んで仕事をされる方は多いと思います。その業務委託契約書ですが、契約条項はすべて確認していますか?もししていない場合には非常に危険です!
もし自分にとって不利な条項が入っていて、それを見過ごしていると、後々不利益を被るのは自分自身です。自分が悪くないのに、不利益を被ることのないように、業務委託契約書の締結にあたっては、細心の注意を払いましょう。相手が送ってきたドラフトをそのまま契約するのはもってのほかです。
そこで、本記事では、私がこれまでの経験上注意しておいた方が良いと思う事項についてご紹介します!
業務委託契約書にこんな条項があったら要注意!
業務内容が漠然としてないか
請負業務であれ、委任業務であれ、最初に業務内容が明記されているはずです。それら業務が自分の認識と合っているかは要確認です。
具体的にどんなことを指しているのか不明な場合や、「~に関する一切の事項」などといった漠然とした内容であれば、後々無理難題を言われかねないので、ちょっとでも疑問に思ったら相手に確認しましょう。
報酬の額・支払時期が自分の認識と合っているか
報酬の額や報酬の支払い時期が自分の認識(見積書)と合っているか確認しましょう。報酬部分の条項は自分の売上に直結するので、売主側としては一番気になる所だと思います。
成果物を伴うのか、それともタイムチャージなのか、そして追加作業が発生した場合の取扱いはどうなるのかなど。後々自分が取り損ねることのないように、しっかりと確認しておきましょう。
仕様書・指示書の責任範囲が不利になっていないか
業務の遂行にあたって、クライアントから仕様書や指示書の提示がある場合には、その仕様書の位置づけや、そこに含まれる内容、連絡の仕方など細かくチェックしておくべきです。
仕様書などをもとに業務を進める場合には、何かトラブルが生じた時にその仕様書の取扱いが非常に重要になります。特にクライアントからの仕様書の提出が遅れた場合や、仕様書が間違えていた場合の責任関係などは明確にしておきましょう。そうしておかないと、後々トラブルが生じた時に自分に不利なことを言われるかもしれません。仕様書を間違えているのは買主側なのに、その責任を押し付けられても嫌ですよね?
業務の進め方やスケジュールが不利になっていないか
仕様書の他にも、業務の進め方やスケジュールに関して細かいルールが契約書に記載されている場合があります。その場合は、それらの各条項が自分にとって不利になっていないかはしっかりと確認しておきましょう。
例えば、業務を進める時は必ずスケジュールの報告が求められたり、各業務の段階で細かい報告が求められている場合など、自分が後々きつくならないように、自分に不利な条項が含まれていないかはしっかりと確認しておくべきです。
相手の検収期間が合理的な期間となっているか
自分が納品した後に、相手がいつまでに検収をしないといけないかという条項は大抵入っていると思いますが、その期間にも注意が必要です。
例えば、極端な話、検収期間が1年とかの長期になっていると、自分が忘れた頃に指摘を受けて、それでも対応しなければならなくなります。業界や業種によって妥当な期間は異なると思いますが、個人的には1か月程度が検収期間としてはせいぜいかなと思います。逆に1か月以上の検収期間を要求する場合には、なぜそんなに長くする必要があるのかは、確認しておいた方がよいでしょう。
契約不適合責任の期限が明記されているか
契約不適合責任とは、納品したものが契約内容に適合しない場合には売主はその補完をしなければならないという、売主側の責任を定めたものです(民法562条)
契約不適合責任は民法にも明記されていることであり、業務委託契約書に記載されていることは特に問題はありませんが、その期限が明記されているかどうかは確認しておきましょう。民法上は、以下の通り1年となります。
期限が明記されていないと、1年を超えて要求されかねないので要注意です。
追加作業や臨時対応に関する報酬・費用について明記されているか
業務委託契約書では、通常の業務内容とは別の追加作業や付随作業、またトラブルが生じた場合の臨時対応などについて定めがある場合があります。(こうした臨時対応に関する取り決めはむしろしておくべきだと思います)
その中で、追加作業や臨時作業に伴い発生した費用の負担や、報酬がどうなるのかということについては、ご自身が不利益とならないように明記しておくべきです。何でもかんでもサービスで対応していては、自分がジリ貧になるだけなので、もらうべきものはしっかりともらうようにしましょう。
中途解約の条件が不利になっていないか
中途解約に関する条項も契約書ではよく見る条項です。中途解約条項では、1か月前通知などの合理的な期間が考慮されているか、中途解約時までに発生した報酬の未払い分についての取扱い(ちゃんと報酬として請求できるか)が明記されているかなどがチェックポイントになります。
存続条項に不利な条項が含まれていないか
業務委託契約書には、存続条項が含まれていることも多いです。存続条項とは契約終了後も有効に生き続ける条項のことで、例えば守秘義務や成果物の権利関係などについては、存続条項として含まれていることが多いです。
そういった納得できる条項であればよいのですが、納品した成果物の品質や、アフターフォローなどについても存続条項に含まれていることがあり、その場合は契約上は数年後でも何かしらの要求がされかねません。このように、後々で不利になりそうな条項が存続条項に入っていないかはチェックしておいた方がよいでしょう。
存続条項は、「第〇条、第〇条、第〇条、・・・は、契約終了後も有効」といった感じで、しれっと追加されているケースもあるので、どの条文が存続条項になっているかは一つずつチェックすることをオススメします。
誠実協議条項が入っているか
契約書では、「この契約書に記載のない事項については、双方が誠意をもって協議して解決を図る」といった条項が入っていることがあります。この条項があるからといって、実際にトラブルが生じた時に何か有効に機能するかと言われると、微妙なところではありますが、この条項があることによって、真っ当な人であれば話し合いの場を持つことが出来ます。
契約書ですべてのことをカバーすることは難しい部分もあるので、いざという時のために、この誠実協議条項がある方が安心材料にはなるかなと思います。
どこまで相手に伝えるかは難しい問題
以上、個人的に業務委託契約書を締結するときの注意点を10個挙げてみました。
ただ、「この条項はどうなんだろう・・・」と思っても、実際に相手に言えるかどうかと言われると、なかなか難しいこともあると思います。特に自分がフリーランスで相手が大企業とかであれば、自分から細かい所まで意見を言うのは難しいかもしれません。変に突っ込み過ぎて、「そんなに言うなら別のところにするよ」と言われでもしたら辛いですよね・・・泣
なので、どこまで言うかは非常に難しい問題です。相手との普段の関係性や、その案件の規模、副次的な効果など色々な観点からどこまで言うべきかは検討する必要があります。
ただ、あまりにも不利な契約であれば、それは後々で自分が困ることになるので、内容によっては、契約をしないという判断も時には必要かもしれません。
まとめ
以上、業務委託契約書を締結するときに注意すべき事項についてでした。
相手のことは信じたいところですが、性善説に立ちすぎて自分が不利益を被ることになっては元も子もないので、契約書を締結するときは、しっかりと内容を確認してから契約締結するようにしましょう!