年末も近づいてきて、だんだんと確定申告を意識する時期になってきました。確定申告は所得税法にも定められた義務であるため、確定申告が必要なのに、申告しなかったり、期限後申告となった場合には、無申告加算税などのペナルティが課せられることがあります。
そのため、自分が確定申告の対象となるのかどうかについては、しっかりと理解しておく必要があります。確定申告が必要だということを知らなかったといっても、残念ながら税務署は許してくれません。
そこで、今回は確定申告が必要となる条件について詳しく解説します。また、確定申告をする義務はないけど、確定申告をした方がいい人についても合わせて解説します。
確定申告とは?確定申告をしなかった場合のペナルティ
所得税の確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税を計算し、申告期限(翌年2月16日から3月15日までの間)までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続のことをいいます。
期限内に申告しなかった場合(期限後申告となった場合)、以下のペナルティが課せられることがありますので、確定申告が必要となる条件についてはしっかりと理解しておく必要があります。
- 無申告加算税:納付すべき税額に対して最大20%を乗じて計算した金額
- 延滞税:納付すべき税額に対して最大14.6%を乗じて計算した金額(納付期限を超過した日数に応ずる)
- 青色申告における特別控除が、55万円(e-Tax等の場合は65万円)から10万円に減額
無申告加算税や延滞税のペナルティも痛いですが、青色申告の特典である特別控除の減額や、純損失の繰越控除等の適用不可も所得の状況によっては非常に大きな痛手となりますので、くれぐれも確定申告の提出忘れがないように気を付けましょう。
確定申告が必要となる条件
給与所得がある人の場合(会社員等)
会社員等の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するため、大部分の方は確定申告をする必要はありません。しかし、次のいずれかに該当する方は、所得税の確定申告をする必要があります。
- その年の給与が2,000万円を超える人
- 給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える人
- 2か所以上から給与収入があり、年末調整を受けていない給与と上記2の所得の合計額が20万円を超える人
- 同族会社の役員等で、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子などの支払を受けた人
- 給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた人
- 給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている人(家事使用人など)
上記のうち、該当する人が比較的多いと思われる条件1~3について補足します。
1.その年の給与が2,000万円を超える人
その年の給与が2,000万円を超える場合、年末調整の対象とはならないため、確定申告をする必要があります。
2.給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える人
年末調整が対象とするのは給与所得だけなので、給与所得外は確定申告をする必要があります。ただし、給与所得以外の所得が少額(20万円以下)であれば、確定申告は不要とされています。副業等である程度の利益が出ている人はここの条件に該当します。
3.2か所以上から給与収入があり、年末調整を受けていない給与と上記2の所得の合計額が20万円を超える人
2か所以上から給与をもらっている場合に、年末調整の対象とはならない給与が発生することがあります。そのため、年末調整の対象とならない給与や上記2でご説明した給与所得等以外の所得の合計額が20万円を超えるような場合には、所得税が正しく計算されていないことになるため、確定申告をする必要があります。
退職金等の退職所得がある人の場合
退職金等をもらう場合には、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金等の支払者が所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告をする必要はありません。一般的には会社からこのやり方を進められるかと思います。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合には、退職金等の支払金額の20.42%の所得税額が源泉徴収されるだけなので、確定申告により所得税額を精算する必要があります。
このとき、源泉徴収された所得税額が正しい所得税額よりも多くなる場合と少なくなる場合があり、後者であれば確定申告が必要となります。前者の場合は確定申告は義務ではありませんが、確定申告をすれば源泉徴収された所得税額の一部が還付されるため、確定申告をした方がお得となります。
- 退職所得があり、源泉徴収された金額が正しい所得税額よりも少ない人
- 源泉徴収の規定が適用されない退職所得の支払いを受けている人
公的年金等に係る雑所得がある人の場合
はじめに公的年金等については、所得税法上「雑所得」となります。そして、公的年金等については、年金受給者の申告手続の負担を減らすため、公的年金等に係る「確定申告不要制度」が設けられています。
これにより、公的年金等による収入が400万円以下で一定の要件を満たす場合には、所得税の確定申告を行う必要はありません。逆にいうと、この条件に該当しない場合に確定申告をする必要があるということになります。
- 400万円を超える公的年金等をもらっている人
- 公的年金等以外の所得が20万円を超える人
- 源泉徴収の規定が適用されない公的年金等の支払いを受けている人
上記以外の人の場合(個人事業主等)
個人事業主やその他の所得が発生している人がここにグルーピングされます。具体的には、個人事業で発生した事業所得や、不動産所得、譲渡所得など上記以外の所得があり、かつ納付すべき所得税が発生する場合に、所得税の確定申告が必要となります。
損失が出ていたり、各種の所得控除により課税所得が発生しない場合には、納付すべき所得税が発生しないので、確定申告をする必要はありません。ただし、後述の「確定申告をした方がいい人」に該当する場合には、確定申告をした方がお得となるため、留意が必要です。
- 上記以外で所得税が発生する人(=事業所得、不動産所得、譲渡所得など)
確定申告をした方がいい人
上記の「確定申告をしなければならない人」に該当しない場合には、所得税の確定申告をする必要はありません。
しかし、例えば所得税の還付が受けられる場合や、青色申告の繰越控除等の適用を受ける場合など、確定申告をした方が節税につながることもあります。このような場合には、確定申告をした方がお得となります。
- 所得税の還付が受けられる人
- 青色申告の繰越控除や繰戻還付の適用を受ける人
- 事業所得等で損失が発生し、損益通算が受けられる人 など
1.所得税の還付が受けられる人
以下に該当する場合には、所得税の還付が受けられるため、確定申告をした方がお得となります。
- 給与所得者で医療費控除等の所得控除を受ける場合
- ふるさと納税の所得控除等を受ける場合
- 源泉徴収された所得税が最終的な所得税よりも多い場合 など
2.青色申告の繰越控除や繰戻還付の適用を受ける人
事業所得等で青色申告をしている方について、純損失の繰越控除や繰戻還付の適用を受けるためには、その年に発生した純損失について青色申告をしていることが条件となります。
3.事業所得等で損失が発生し、損益通算が受けられる人
不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得について損失が発生した場合、一定の順序にしたがって、他の所得から控除することができます。これを「損益通算」といい、所得から控除された分、課税される所得金額が小さくなるため、節税に繋がります。
確定申告を忘れずに
以上、確定申告が必要となる条件や確定申告をした方がいい人についての解説でした。
確定申告が必要となる条件は意外と複雑なので、何らかの経済的利益を得た場合には「確定申告をする必要があるかな?」と少し立ち止まって考えてみることをおススメします。
期限内に確定申告をしなかった場合、本来納めるべき所得税はもちろん、無申告加算税等のペナルティまで課せられることもあるため、くれぐれも申告忘れがないようにしましょう。
また、確定申告が必要ではなかったとしても、所得税の還付や青色申告の特典等を得るためには確定申告をした方がいい場合もあるので、該当する方は是非期限内に確定申告をするようにしましょう。