売上原価と販管費のどちらになるか迷ったことはありませんか?今回は実務でも迷いやすい売上原価と販管費の違いについて解説します。
判断する際の実務上のコツについてもご紹介します。
売上原価とは?
売上原価の基本的な考え方
企業会計原則では以下のように定義されています。
売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。
企業会計原則
ポイントとしては黒字の部分で、販売する商品の仕入代金や、製品を製造するための製造コストが売上原価になります。
実際にモノを仕入れる小売業や製品を製造する製造業であればイメージしやすいかと思います。
売上原価の具体例
例えば、本屋や雑貨屋、アパレルなどの小売業であればお店に置いている商品の仕入れ代金が売上原価になります。
製造業であれば、製品を製造するためのコスト、つまり製造するために必要な材料費や、製造を行う社員の人件費、工場の減価償却費や水道光熱費などが該当します。
販管費とは?
販管費の基本的な考え方
販管費とは、商品やサービスを販売するための販売費と、会社や事業を管理するための費用である一般管理費で構成されます。
企業会計原則では販管費の定義になるような記載はありませんが、売上原価とは区分するように明記されています。
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して表示する。販売費及び一般管理費は、適当な科目に分類して営業損益計算の区分に記載し、これを売上原価及び期末たな卸高に算入してはならない。(以下省略)
企業会計原則
販管費の具体例
販売費の具体例としては、営業社員の人件費や、商品等の広告宣伝費などが該当します。
販売した商品の発送費用や販売代理店への手数料などの販売促進費も販売費に該当します。
一般管理費の具体例としては、管理部門の社員の人件費や、人材採用に係る費用、保険料、消耗品費、租税公課などが該当します。
売上原価や販売費に該当しない残りの雑多な経費が一般管理費になるイメージです。
売上原価と販管費の違い
売上原価は売上の源泉、販管費はその他の経費
両者の違いをまとめると、売上原価は商品等の仕入れ代金や製造コスト、販管費はその商品等を販売するための費用や事業全般を管理するための費用ということになります。
売上原価は売上の源泉であり商品やサービスを生み出すための費用、販管費はその他の経費というイメージで問題ないかと思います。また、売上原価はその性質上、取引の成立自体に必要不可欠な支出である場合が多いです。
売上原価と販管費を区分する際のコツ
迷ったら商流や取引の中身で考える
基本的な考え方はご説明した通りですが、実際判断するとなるとけっこう悩みます。迷ったときにおススメなのが、商流や取引の中身で考えるというものです。
その費用はどんな内容で、なんのために支出するのか。その費用がなければその取引はどうなるか。
ここで、その費用の支出がなければ取引自体が成立しない(売上を上げることが出来ない)のであれば、売上原価の可能性が高いです。
例えば、商品の仕入れや製品製造がなければそもそも売上を上げることはできません。なので売上原価です。
例えば、工場で働く社員の寮費などの福利厚生費は、間接的に製品製造のために不可避の支出です。なので売上原価です。
例えば、コンサルタント会社でサービス提供のための成果物の作成の一部を外注している場合(外注費)は、その外注がなければそもそも納品することができません。なので売上原価です。
逆に自社のコンサルタント(人件費)はもちろん提供するサービスの一部を担いますが、営業から代金回収まで色々な業務もこなしています。また提供するノウハウ自体はすでに会社に蓄積されているとも考えられます。なので明確に売上原価とはいえず、通常の人件費(販管費)になる可能性が高いです。
こういった感じで、その費用がない場合に取引がどうなるのかということを考えると意外と納得感のある判断ができたりします。
厳密に分けるときりがない
売上原価か販管費かの判断は正直人によって分かれます。
なので、明らかに売上原価となるような費目や金額が大きい費目について、売上原価への計上漏れがなければ十分だと考えます。
判断が分かれるような費目や金額が小さい費目まで検討しているときりがないですからね、、、
売上原価と販管費の区分は大事
売上原価と販管費の区分は非常に奥が深いです。大企業の会計監査をしている時でも売上原価と販管費の区分はよく論点としてあがりますし、会計士の中でも意見が分かれることもあります。
とはいえ、売上原価と販管費の違いを整理することは、自社のビジネスで粗利(売上総利益)と営業利益を分析する際には非常に重要なデータになりますので、無理のない範囲で区分することをおススメします。