昨日、確認状の差異調整についての記事を書きましたが、今日も確認状ネタになります。
今日は監査をする会計士側の話です。
期末監査では銀行確認状や債権債務の確認状など、多くの確認状を発送します。
発送する確認状の件数も多いため、回収管理が非常に重要になってくるわけですが、この回収管理は若手会計士が行うことが多いと思います。
私も監査法人に入りたての頃は、どの監査チームでも確認状の回収管理をしていました。
今日は、そんな確認状の回収管理をする若手スタッフ向けに、確認状の回収管理をする際のコツなどについて書こうと思います。
コントロールリストの作成と更新
確認状の回収管理をする際に一番大事なことは、回収状況を適時適切に把握することです。
回収期限を過ぎても届いていない確認状は再発送の対象となりますし、差異が発生している確認状は会社に連絡して差異調整をしてもらう必要があります。
また、発送先から問い合わせが来ることもありますし、期末監査が始まれば科目担当者を含むチーム全体で回収状況の共有が必要となります。
これらを漏れなく、正確に行うためには、コントロールリストの作成と随時更新していくことが大事なポイントになります。
コントロールリストには、管理番号、発送先、発送先住所、科目、金額、発送日、再発送日、回収日、差異の有無、差異金額、差異調整の状況、などなどその確認状がどのような状態となっているかが一目でわかるようにする必要があります。
コントロールリストは、確認状の発送時に同時に作成しておくと効率的です。
確認状の回収状況等を管理するためには、このコントロールリストが要となりますので、気合いを入れて管理するとよいでしょう。
発送時に控えのPDFを取っておく
確認状の発送後は、発送先から色々な問い合わせがきます。
例えば、
「確認状というものが届いたんですけど、何をすればいいんですか?」
「返送が送れそうです」
「銀行届出印が違うのでもう一度送ってもらえますか?」
「明細を送ってもらえませんか?」
などなど、色々な問い合わせが来るでしょう。
その際、どの科目で、金額がいくらで、いつ送ったものなのかなどの情報を把握しておかないと、問い合わせに対して適切な対応を取ることができません。
そのため、自分たちがどんな確認状を送付したのかが確認できるように、確認状は発送する前に控えを取っておきましょう。
これを忘れると、後々で地味に不便になるでしょう。
回収時に再発送の要否を確認
確認状を発送してしばらくしたら、徐々に確認状が返送されます。
返送された確認状は、必ず回答内容を確認しましょう。
その回答内容によっては、再発送が必要な状況も往々にしてよくあります。
例えば、回答日付・勘定科目・金額の未記載、押印がない、明細が添付されていない、確認内容と著しいズレがある場合には、再発送が必要となる可能性もあります。
再発送するかどうかは、監査チームの主査や社員の判断が必要となる場合もあるため、いずれにしても回答内容は必ず開封して、回答内容が問題なさそうかを確認する必要があります。
債権債務は差異状況も確認
債権債務の確認状については、差異があった場合には、会社に差異調整をしてもらう必要があります。
そのため、回収した債権債務の確認状は、確認金額と差異があったかどうか、差異金額がいくらかを確認しましょう。
そして、差異調整が必要な場合は、すぐに会社にPDF等で内容を共有し、差異調整のお願いをします。
なお、差異金額が僅少な場合には、差異調整をしないという判断をする場合もあるので、その判断に迷った場合には、先輩や主査等に確認するようにしましょう。
確認状の回収管理は年次の若いスタッフが行うことが一般的だと思いますが、確認手続き(確認状)は非常に重要な監査手続となるため、判断等に迷う場合には自分一人で判断するのではなく、必ず上席者に相談するようにしましょう。
回収状況は会社にも共有
差異状況を確認するところでも書きましたが、確認状の回収状況は会社にも定期的に共有するようにしましょう。
確認状の回収業務は、監査チームだけでできるものではなく、会社の協力なしではできません。
先方からの問い合わせ内容のフィードバック、再発送時の対応、差異調整の対応など、会社の協力が必要となる場面は多いため、回収状況などを定期的に共有するようにしましょう。
共有するのは、コントロールリスト(若しくはそのサマリ)、回収した確認状のPDFです。
確認状の回収業務は、期末監査の前から終盤まで長く続くため、当該業務を円滑に進めるためには、会社との協力体制がとても大事になってきます。
一人でやろうとしない
ここまで色々な留意事項を書いてきましたが、確認状の発送や回収などの取り纏めはとても大変な業務です。
単純労働な部分もありますが、会社や取引先、監査チームメンバーなど関与している人も多くなり、一つの作業でミスがあればその影響も大きくなります。
そのため、確認状の取り纏め担当者を任命されたからと言って、何でもかんでも一人でやる必要はありません。
むしろ、先輩や会社担当者を巻き込んで、日々情報共有をしながら業務を進めた方がうまくいきます。
そのため、確認状の取り纏めは一人でやるのではなく、監査チームメンバーや会社担当者と協力しながらやるものという認識を持った方がよいでしょう。
翌期留意事項をメモしておく
期末監査が終わるころには、確認手続きも概ね完了していると思います。
そして、発送時から回収、調書化までに色々な翌期留意事項が出ていると思います。
発送先の住所違い、届出印違い、クレームなどなど、翌期も同じ轍を踏まないように、翌期に留意すべき事項はコントロールリストなどに記載しておきましょう。
そうした地道な蓄積は、監査チームの財産にもなってきます。
まとめ
確認状の手続きは、簡単な部分もありますが、非常に奥が深い手続きでもあります。
確認状の回収管理業務を一通りこなせるようになってくると、監査人としての実力もだいぶついてくると思います。
もし確認状の取り纏め担当者に任命された場合には、大変な部分もあるかと思いますが、先輩たちにも相談しつつ、頑張って管理していきましょう。
一生懸命対応していれば、会社からの評価も得られると思います。