現金・預金勘定と事業主勘定(貸・借)の使い分け【プライベート用と混在しているなら現金・預金は使わない!】

個人事業主やフリーランス(以下、個人事業主)の方の会計データを見ていると、売上や経費の相手科目を現金や預金勘定で処理している方が結構多いように感じます。

しかし、我々税理士は個人事業主の方の記帳をする場合には、現金・預金勘定を使わずに事業主貸・事業主借といった事業主勘定をよく使います。

なぜそのような記帳をするのか、またこの記帳方法がオススメな理由について、本記事で解説します。

目次

事業用資金として管理している場合

売上・経費は現金・預金勘定で処理する

もちろん現金商売をしている方や事業用の銀行口座がある方であれば、現金・預金勘定を使う必要があります。

この場合、例えば現金売上があれば売上の相手科目は現金になりますし(現金××/売上××)、振込払いで経費を払えば経費の相手科目は預金(経費××/預金××)になります。

青色申告の要件となる正規の簿記の原則では、事業上の取引はすべて記帳する必要があり、事業用の現金や預金を管理しているのであれば、上記のように現金・預金で仕訳処理する必要があります。

プライベート用と混在している場合

売上・経費は事業主勘定(貸・借)を使う

しかし、事業用のお金とプライベートのお金が混在している方、例えば売上が個人口座に入金され、経費は個人口座から出金しているような方であれば、現金や預金勘定を必ずしも使う必要はありません。

なぜなら、①個人口座に入金されたお金は事業主(自分)に貸したと考えられ、②個人口座から出金したお金は事業主(自分)から借りたと考えることが出来るからです。

事業主勘定の仕訳例

上記の①②を仕訳で示すと以下の通りです。

①事業主貸 ××/売上高 ××

→売上入金を個人口座に入金した。つまり事業主に貸した。

②経費 ××/事業主借 ××

→経費を個人口座から出金した。つまり事業主から借りた。

上記は個人口座で入出金があった場合ですが、これは現金で取引した場合も同様です。

現金であったとしても、事業主に貸した、事業主から借りたと考えることができます。

事業主勘定を使う理由・メリット

上記のように事業主勘定(貸・借)で処理することで、仕訳が非常にシンプルになります。

また、現金や預金勘定を使っている方の決算書でよく見るのが、現金や預金勘定が実際の残高よりも多額になってしまっているケースです。

なぜそのような状況になっているのかというと、売上や経費を現金・預金勘定で処理するだけで、生活費の支出は仕訳として計上しないため、実際の残高よりも会計上の残高が多くなってしまうのです。

例えば、実際の残高が100万円なのに、会計上の残高が1,000万円とかになってしまっていると、それは青色申告決算書として正しい状態になっているとは言えません。

実際の残高が100万円なら、生活資金も考えれば事業用のお金は100万円以下になるはずです。

上記のような状況は、プライベートのお金と事業用のお金が区分されていない場合に起こります。

そこで、事業用のお金を特に区分していない場合は、売上(入金)は事業主貸、経費(出金)は事業主借として処理するのです。

その結果、青色申告決算書上の残高としては、現金・預金勘定はゼロ(残高なし)となり、事業主貸と事業主借の残高だけが残る形になります。

事業主勘定の残高は翌期首にリセットされる

この事業主勘定(貸・借)は翌期首に元入金に加減算することで精算されるので、事業主勘定(貸・借)が変な残高になることはありません。

事業主勘定については、こちらの記事で詳しく解説していますので、もしよければご覧ください。

まとめ

私(個人事業主)の場合でいうと、事業用の現金管理はしていないので青色申告決算書上はゼロ、預金は屋号付きの事業用銀行口座があるため、その12月末残高が青色申告決算書上の残高となっています。

プライベート用のお金と事業用のお金を特に区分していない場合は、事業主勘定(貸・借)で処理することで仕訳をシンプルにすることが出来ますし、青色申告決算書上の現金・預金の残高が実際よりも多くなってしまうこともなくなるので、個人的にはオススメの処理方法です。

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