開業費とは?定義や範囲・処理の仕方などを具体例を交えながら詳しく解説します!

個人事業主には「開業費」という概念があることをご存じでしょうか?

簡単に言うと、開業するために要した費用のことで、自分の好きなタイミングで費用にすることができます。

開業時には色々費用が掛かるかと思いますので、こうした支出はしっかりと費用に計上して、賢く節税していきましょう!

目次

開業費の定義や範囲を具体例で解説

開業費の定義と3つのポイント

開業費とは、「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用(所得税法施行令7条1項)」のことをいいます。

もう少しかみ砕いて言うと、個人事業主(不動産オーナー)がその事業を始めるために使った準備費用のことを、税務上「開業費」といいます。

開業費を理解するためのポイントとしては、以下の3つが大事になってきます。

①対象は不動産所得、事業所得、山林所得

→対象となる所得は上記の3つのみなので、雑所得になる副業には適用できません。

②事業を開始する前までの費用(基本的には開業届に記載する「開業日」)

→開業するための準備費用なので、開業する前までの費用が対象となります。この開業のタイミングについては、明確なルールはありません。そのため、一つの客観的な基準として、開業届に記載する開業日前の支出を開業費にするのがよろしいかと思います。

開業届については、↓の記事で詳しく解説しています。

→また、事業を開始する前はどこまで遡れるのかというと、こちらについても明確なルールはないので、開業準備と言える場合には数か月前でも問題はありません。大事なのは開業のために要した費用と説明出来るかどうかです。

③特別な費用

→特別な費用のみが開業費となるので、恒常的な費用は開業費にはなりません。例えば、仕入や水道光熱費、通信費、消耗品などは開業のためではなく、事業を行っていく上で普段から使用・利用する支出に該当する場合が多いと思いますので、こういった場合は厳密には開業費にはなりません。

こうした費用がある場合は、金額が少額であれば開業費に纏めても実務上は問題はないと思いますが、金額が大きい場合には、通常の費用として処理することを検討するとよいでしょう。

→また、取得価額10万円以上で固定資産となる場合や、建物賃貸借の際に支出する敷金・礼金等は開業費にはならないので注意が必要です。敷金は将来返還されるものであればそもそも費用にはなりませんし、礼金は支出金額が20万円未満であれば「支払手数料」、20万円以上であれば「長期前払費用」として基本的には5年間で費用化していくことになります。

開業費の具体例

開業費の具体例としては、以下があります。

開業費の具体例
  • 開業に関して、専門家や助言をしてくれる人との打ち合わせに要した費用(飲食費、交通費など)
  • 開業後に必要になる知識を得るための費用(書籍費、調査研究費など)
  • 開業後に必要な資格を取得するための費用(支払手数料など)
  • 開業をPRするための費用(広告宣伝費など)
  • その他、開業準備のために要した特別な費用

事業内容によって、開業準備に要する費用は変わってくるので、どんな費用が開業費になりそうかどうか(開業費で説明できそうかどうか)は一度考えてみると良いでしょう。

そして開業費になりそうだな(説明できそうだな)と思った場合は、開業費として集計していきましょう。

開業費の処理の仕方

開業費は60か月の均等償却or任意償却

開業費は60か月で当期の月数分を均等(=1か月単位)に償却(費用化)していくか、自分の好きなタイミングで償却(費用化)するかを選択できます。

個人事業主の所得税においては、税率が所得の増加に応じて上がっていく累進課税制度となっているので、5年間の間に所得が増加していくことが見込まれる場合には、60か月の均等償却の方が税務上は有利(税金が安くなる)となります。

ただし、5年間帳簿に残り続けますし、記帳の手間もあるので、そういった作業がめんどくさいのであれば、開業初年度に一括償却してしまうのもありかと思います。

個人的には、開業当初は資金繰り的にも余裕がない場合が多いと思いますので、開業初年度に一括償却して、開業の翌年の所得税を少なくする方が良いのかなと思います。

私も自分自身の開業費は初年度に一括償却しています。

開業費の仕訳

開業費は件数も多くなることから、1件ずつ仕訳をするのは現実的ではありません。

そこで、対象となる開業費をExcelなどで集計して、それらの合計額をまとめて仕訳をする方法がオススメです。

<開業費の発生時(支出時)の仕訳>

(例)開業費100万円を支出した。

開業費 100万円/元入金 100万円

→上記金額は開業費の合計額です。「元入金」というのは、開業前の支出を個人事業主の財布から出したという意味になります。開業費については、開業前の支出ということで、まだ事業用資金がないという前提になるので、「元入金」という勘定科目を使います。

<開業費の償却時(費用化)の仕訳>

(例)開業費100万円を一括償却した。

減価償却費(繰延資産償却費) 100万円/開業費 100万円

→一括償却で処理する場合は、上記のように開業費全額を減価償却費等の勘定科目で処理します。

(例)開業費100万円を均等償却で処理した。開業日は10月1日だった。

減価償却費(繰延資産償却費) 5万円/開業費 5万円

【計算式】100万円÷60か月×3か月(10月~12月)=5万円

→60か月の均等償却で処理する場合は、当年の月数分の金額を計算して、処理します。

上記は一応仕訳で示していますが、市販の会計ソフトを使っていれば、開始残高の登録(開業費の発生)や固定資産台帳への登録(開業費の償却)をすることで、上記の仕訳が自動で作成できることもあります。

確定申告書での書き方

開業費は繰延資産として、固定資産台帳に載せる必要があります。

市販の会計ソフトを利用していれば、固定資産台帳への登録を通じて、確定申告書に添付する固定資産台帳も自動で作成してくれるとは思いますが、確定申告時には開業費も載せた固定資産台帳の提出が必要になるという点は理解しておくとよいでしょう。

例えば、私が2021年の確定申告で作成した固定資産台帳のうち、開業費部分は以下で作成・申告しています。

取得金額と当年にいくら費用化するのか、そして60か月の均等償却と任意償却のいずれを選択したのかを摘要欄に記載するなどしておくとよいかと思います。

まとめ

開業費は対象となる範囲が内容的・期間的に広いことから、うまく集計すれば結構節税に繋がります。

そのため、開業を考えだしたら、開業費になりそうなものはExcelなどで集計し、レシートなどの領収書なども保管しておくとよいでしょう。

どのような費用が開業費になるか悩んだ場合は、税務署に電話で問い合わせるか、税理士にご相談いただければよいかと思います。

当事務所でも開業費に関するご相談は承っておりますので、お気軽にご相談ください!

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