何かの商品やサービスを買うときには自分名義のカードや預金口座を利用して自分で買うのが普通ですが、中には自分以外の第三者の名義を利用して購入する場合もあります。
例えば、
- 社長が会社名義ではなく自分名義のカードを使う
- 家族名義のカードを使う
- 知人に購入の代行を依頼して知人名義のカードを使う
などです。当然他人名義で購入してもらったその代金は返すのですが、その代金は自分の支出として考えてよいのか、消費税の課税事業者であれば消費税の仕入税額控除を自分に適用してよいのか。
税務上は色々と論点があります。
結論としては、
- その購入した商品やサービスを自分が利用しているのであれば自分の費用として考えてOK
- ただし、消費税の課税事業者で小売店等以外から購入する場合は消費税の仕入税額控除が適用できない場合がある
となります。
まず一つ目は、税務の世界では実質課税という考え方があるため、実態としては誰が買ったものなのか(誰が使ったものなのか)という考え方で処理すればOKです。
下記は所得税における実質課税の考え方ですが、これは法人と個人間や、消費税においても同様の考え方があります。
ただし注意点として、二つ目の消費税の仕入税額控除の問題があります。
消費税の課税事業者で原則課税(簡易課税・2割特例以外)で計算をしている方については、仕入税額控除の適用要件として帳簿記載要件と領収書等の保存要件があります。
参考:No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項
このうち領収書等の保存要件では、その購入した商品やサービスの領収書等が必要になり、小売店などの不特定多数を相手にしているお店から買う場合には宛名がないので問題ないのですが、例えばB to Bの卸業者から購入してもらうような場合には宛名がその代理した人の名前になっているため、このままでは依頼した人の仕入税額控除の要件を満たさなくなってしまいます。
後者のような卸業者から購入する場合には、立替金精算書が必要になります。
参考:立替金精算書について(国税庁インボイス制度に関するQ&A問94)
もしくは、その代理購入してもらった方から領収書等をもらう方法もありますが、その人がインボイスの登録事業者ではない場合には、今なら消費税の2割が控除できませんのでご注意ください。(この2割は経過措置で、今後5割控除不可、全額控除不可となっていきます)
購入を依頼する人が消費税の免税事業者であれば取引の実質を考えるだけでよいですが、消費税の課税事業者で原則課税(簡易課税・2割特例以外)で計算している方の場合は、消費税法上の留意点が多くなりますので、特にご注意ください。