つい先日、個人事業主の友人とお茶をしに行ったときに、その友人が「領収書をください」と店員さんにお願いしていました。その友人はレシートとは別に毎回領収書をお願いしていたので、「レシートでも大丈夫だよ」と教えてあげたところ、「え?そうなの?」という感じでした。
先に結論を言うと、税務上の経費になるかどうかという観点からは、領収書でもレシートでもどちらでも大丈夫です。ただ、それぞれ特徴というか、気を付けておくべき点などもあるので、今日はその辺の話をしようと思います。
領収書とレシートの税務上の取扱い
事業で使った経費であることが分かればどっちでも大丈夫
法人税法や所得税法において、必要経費になるかどうかの要件に、領収書とレシートのどちらよくて、どちらがダメというような規程はありません。そのため、事業の経費にするためには領収書とレシートのどちらでも大丈夫です。わざわざ「領収書をください」と言う必要はありません。
大事なのは、事業の必要経費であることを証明できる書類かどうかという点です。そういう意味では、何を買ったかが詳しく書いてあるレシートの方が適している場合も多いです。
課税事業者の場合は要注意
ただし、消費税の課税事業者の場合は注意する必要があります。課税事業者として消費税の課税義務が生じると、基本的には売上分の消費税から仕入れや経費でかかった消費税を控除して、納税額が決まりますが、この仕入等の消費税の控除をするためには、領収書等に以下の事項の記載が求められます。
- 領収書等の作成者の氏名又は名称
- 購入等をした年月日
- 購入等をした物品やサービスの内容
- 税率区分ごとの対価の額
- 領収書等の交付を受ける事業者の氏名又は名称
そのため、課税事業者の場合は、領収書やレシートをもらう際に、上記の内容が漏れなく記載されていることを確認する必要があります。
なお、上記5の要件は、小売業、飲食店業、タクシー業などで不特定多数の客が相手である場合には満たさなくてもよいとされています。例えば、カフェでお客さんの名前を都度確認するのは現実的には難しいので、そういった事情が配慮されています。
経費にするためには領収書とレシートのどちらがよいのか
では、ここからが本題です。課税事業者の場合の注意点としては、前述の記載要件を満たしているかどうかなので、ここでは経費にするためという観点で、領収書とレシートのどちらがよいのかを考えてみます。
レシートのメリット・デメリット
レシートのメリット・デメリットは以下の通りです。
- 基本的には何も言わなくてももらえるので楽
- 取引内容が詳しく書いてあるので説明はしやすい
- 取引内容が詳しく書いてあるので突っ込まれる可能性もある
- 宛名がないことも多いので、架空経費の可能性がある
レシートのメリットは何といっても楽なことです。何か買う度に「領収書をください」というのはめんどくさいですし、店員によっては、領収書の発行に慣れていないこともよくあるので、手間を考えたら領収書よりもレシートに軍配が上がります。
また、取引内容が詳しく書いてあるので、記帳する際にも思い出しやすいですし、もし税務調査で提出することになっても、わざわざ説明しなくても取引内容が分かるので、その分手間が減ります。
逆にレシートのデメリットとしては、プライベートよりの経費を計上したときに税務調査で細かい追及を受ける可能性があるという点です。そのため、後から突っ込まれそうだなと思ったレシートについては、なぜ経費にしたのかをレシートにメモしておくと後で突っ込まれてもあたふたしません。
デメリットの2つ目ですが、レシートはレジ前やそこらへんに落ちているので、法人の従業員でこのようなレシートを悪用して経費精算をして自分のポケットに入れる輩もいるかもしれません。レシートの場合は、宛名がないことも多く、こうした悪用の可能性があるので、従業員の経費精算時の証明書類としてレシートを採用している法人の場合には注意が必要です。
なお、他人のレシートを自分の経費として申告するのは完全な脱税なので、絶対にやめましょう。
領収書のメリット・デメリット
領収書のメリット・デメリットは基本的にはレシートの裏返しです。
- 手書きの領収書であれば、取引内容の記載がシンプルなので、余計な詮索をされにくい
- 宛名があるので、架空経費という可能性は低い
- 領収書をお願いする手間がかかる
- 取引内容がシンプルなので、説明を求められる場合もある
基本的にはレシートでOK。状況に応じて領収書も活用する。
以上見てきたように、領収書とレシートにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、基本的に経費にするためにはわざわざ領収書をもらわなくてもレシートで十分なので、個人的には手間を考えてレシートでよいと思います。
冒頭で紹介した友人のように、単に経費にするために領収書が必須という風に考えているのであれば、レシートでも経費の証明書類としては何の問題もないので、レシートだけをもらっておきましょう。
法人で従業員の経費精算をするための根拠書類とする場合や、余計な詮索をされるのを避けたい場合には、手書きの領収書の方がよいでしょう。ただし、手書きの領収書があまりにも多いと、税務調査で突っ込まれる可能性もあるので、その際の説明の準備だけはしておきましょう。
まとめ
巷では、毎回「領収書をください」と店員さんに言う方もいますが、単に経費のエビデンスにするだけであればレシートで十分なので、レシートだけをもらっておきましょう。
以上、経費に落とすためには領収書とレシートのどちらがよいのかについてでした。参考になりましたら幸いです。