新規ビジネスや法人成りを検討しているときに、法人でやるべきか、それとも個人でやるべきか、という悩みを抱えている方は多いでしょう。私もそういった質問や相談をよく受けます。基本的にはどちらがより節税になるかで考えることになるとは思いますが、それ以外でも考えておくべき事項はたくさんあります。本記事ではそういった節税以外で考えておくべきこと、そして意外と個人事業主もあり、という話をしたいと思います。
節税以外で考えておくべきこと
対外的な見た目(事業上の理由)
資産管理会社やマイクロ法人は別にして、対外的なビジネスをしていく場合には個人やるのか、法人でやるのかによって色々と違いや影響が出てきます。例えば、
- 取引先から法人じゃないと仕事はお願いできないと言われる
- 新規事業を進める時に法人じゃないと対外的な信用力が劣る
- 人を採用したいときに法人じゃないと不安がられる
といった感じです。基本的には法人のほうが対外的な信用力やウケはいいでしょう。なので、対外的なビジネスをバリバリしていきたい方は法人のほうがオススメです。ただし、小売店のように会社名ではなく屋号やサービス名で対外的なビジネスをするのであれば法人じゃなくてもそこまで影響はないことも多いです。
会社を維持する手間(経理や税金など)
個人的にはこの観点が地味に一番重要だなと思っているのですが、会社を維持管理するのは個人でやるよりもとにかくめんどくさいです。体感2倍~3倍は手間がかかると思った方がいい。何がそんな面倒かというと、例えば、
- 個人と法人でお金や口座を分ける必要がある
- 記帳や税金は税理士とのやり取りが必要(自分でできるなら不要)
- 源泉税、年末調整、法定調書など個人よりも税金関連のタスクが多い
- 役員報酬は勝手に変えられない(個人で自由にお金を使えない)
- 社会保険の手続きが必要
といった感じで、とにかくやらないといけないことが多いです。なので、基本的には税理士にお願いする方がほとんどだと思いますが、そうなるともちろん税理士代もかかるわけで、あと税理士とのやり取りも結構頻繁に必要なので、そういうのが面倒と感じる方もいると思います。
ということで、法人は維持管理する手間が個人の比じゃないので、こういうのがめんどくさい方は個人でやるというのも全然ありだと思います。
税務調査が入る可能性
次に税務調査が入る可能性です。これは法人のほうが高いので、その心配があるのと事前に対策も必要になってきます。もし税務調査が入ればその対応も必要になります。
なぜ法人のほうが税務調査が入る可能性が高いのかというと、基本的には儲かっている人が法人でやっているので税金も取りやすいというのはありますが、法人だとプライベート分を役員賞与として認定することで追徴課税がいっぱい取れるので、そういう事情もあって税務署は法人のほうを重視しています。
法人でやるなら税務調査が入る可能性を常に頭に入れておく必要があります。
将来廃業する時の手間やコスト
最後に意外と考慮されていないことが多いのが、将来廃業する時の手間やコストについてです。個人の場合は廃業届を出すだけなので超簡単なのですが、法人の場合は清算手続きが必要になり、最低追加で2回(解散確定申告+清算確定申告)の確定申告と各種登記が必要になります。この手続きは非常に複雑で、税理士や司法書士に依頼する場合には、最低30万~40万ぐらいはかかります。
会社の場合は、個人の時のように廃業届を1枚書いて終了とはならないので、早めに会社をたたむ可能性があるのであれば、会社を作るのも再考した方がよいでしょう。
個人事業主の良いところ
以上、節税以外で考えておくべきことをざっと見てきましたが、個人事業主のいいところは「とにかく楽」ということです。
法人と個人のどちらでやるべきかを考える時には、個人事業主のこの気楽にできるというメリットは是非覚えておいてください。もちろん節税額が大きいのであれば法人でやった方がいいとは思いますが、そこまで節税差がない人や気楽にビジネスしていきたい方であれば、個人でやるのも全然ありです。
まとめ
以上、起業は会社と個人のどちらでやるべきか、についてでした。
この論点に関してはその人の事業の状況や所得の状況、家族構成や本人の性格などによって正解は全然変わってきます。どうすべきか悩んだ場合には、周囲で起業している方や税理士などに相談されることをお勧めします。
とりあえず会社は作ったはいいけど、いまいち使いこなせず、無駄な手間やコストがかかり続けるといったことは避けたいですね。