ソフトウェア仮勘定の表示方法について検討する機会があったので、備忘までにまとめておきます。
ソフトウェア仮勘定とは
ソフトウェア仮勘定とは、ソフトウェアになる前の一時的な状態を示す勘定科目であり、以下の場合に使われる勘定科目です。
- 市場販売目的で制作する製品マスターに関する仕掛品の計上
- 自社利用のソフトウェアに関する開発仕掛品の計上
上記いずれの場合も、完成した段階で「ソフトウェア」に振り替えて、利用開始とともに減価償却を行います。
本勘定(ソフトウェア)になる前の一時的な勘定科目という意味では、同じく固定資産に属する「建設仮勘定」と似ている科目になります。
ソフトウェア仮勘定の表示方法
会計基準上の取扱い
ソフトウェア仮勘定について、会計基準上では「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」で下記の通り言及されています。
10.製品マスターについては、適正な原価計算によってその取得原価を算定する。製品マスターの制作原価は、制作仕掛品についてはソフトウェア仮勘定などの勘定科目により、また、完成品についてはソフトウェアなどの勘定科目によって、いずれも無形固定資産として計上する。なお、無形固定資産としての表示に当たっては製品マスターの制作仕掛品と完成品を区分することなく一括してソフトウェアその他当該資産を示す名称を付した科目で掲げることとするが、制作仕掛品に重要性がある場合にはこれを区分して表示することが望ましい。
上記によれば、ソフトウェア仮勘定は基本的にはソフトウェアに含めて表示するが、ソフトウェア仮勘定に重要性がある場合には別掲するということになります。
ただし、上記はあくまで製品マスター(市場販売目的)についての記載なので、自社利用目的の場合に当てはめる場合には参考という位置づけになります。
財務諸表等規則上の取扱い
財規ではソフトウェアも別掲対象とされていますが、ソフトウェア仮勘定について直接的な記載はありません。(財規27条)
しかし、ソフトウェア仮勘定の金額が資産の総額の100分の5を超えるものについては、金額的基準により別掲対象となります。(財規29条)
また、「・・・別に表示することが適当であると認められるものについて、当該資産を示す名称を付した科目をもつて別に掲記することを妨げない。」(財規17条2項、28条2項)という条文もあることから、積極開示としてソフトウェア仮勘定を別掲することに問題はありません。
実務的には別掲しているケースが多い
以上基準上の取扱いを確認しましたが、私が開示時例を調べた限りでは、ソフトウェア仮勘定は別掲している会社が多い印象はありました。
それは、金額が大きい場合だけでなく、少額でも別掲開示している企業も多くありました。
自社利用目的でのソフトウェア開発は、会社の事業内容的にも(質的な)重要性が高いことも多く、そうした背景からソフトウェアとは区分して別掲開示する会社が多いのかなと推察します。
また、ソフトウェア仮勘定は、CF計算書や計算書類の附属明細書など、影響してくる箇所も多いことから、予め別掲開示することで、文章等での追加説明を一部省略できるなどのメリットがあります。
まとめ
ソフトウェア仮勘定は、基準上は重要性がある場合は別掲開示となり、実務的には別掲開示している会社が多い印象がありました。
そのため、金額が限りなく小さいような場合を除き、基本的には別掲開示するスタンスが良いかなと考えます。
重要性が低いという判断であれば、ソフトウェア(若しくは無形固定資産その他)に含めて開示しても問題ないかと思います。